■雀鬼の戦術...
夏至の長い夕刻。
とある会合で、優に70を過ぎた同業の社長さんとお酒を飲む機会があった。
物事に古りた方で、話題が豊富な老紳士だった。
色々な案件が出た中で、私が飛びつくように聞き直した話がついに出た。
『著名なプロ雀士の試合を見る機会があったのだが、手の打ち方が凄かった』
たぶんそのプロ雀士は、その世界で通称、雀鬼と言われているような方だ。
一体、どのような打ち方をするのだろう...
麻雀やポーカーなど、ゲームの要領はいかに早く自分の手の内を整えて、
相手より一手でも早く上がる事が、全てに通じる道となる。
そのため、必然的に自分の手の中身の構築だけに集中する事になるのだが、
それがよろしくない。 周りが見えない典型、つまり素人の域だと言う。
雀鬼は相手の手の構築を邪魔しながら、自分の手の内を刻々と
まとめ上げていく。 この邪魔をしながら、という運びが出来ない。
ゲーム序盤で相手の手の内を一瞬で読み取り、ポーカーフェイスよろしく
妨害を優先しながらも、自分の手を打ち、素早くまとめ上げる。
麻雀の場合、相手は3人で、その手を同時に読み切るのは常人でない業なのだ。
相手方はその戦術のせいで一向に上がれず、勝負にもならない。
それは自分の腕前でも、ツキのせいでもない。 鬼の罠なのだ。
これがゲームだけの話なら、まだ良いかもしれない。
仕事にもこの戦術を応用するか、されるかによっては大違いになってしまう。
例えば、当社が運営しているレンタル用のコンテナボックスも同様の
視点やセンスが必要になるのではないか、と思った。
単に現場をオープンして、多少の広告媒体を利用して、お客様を募って
待っているだけでは、多分駄目なのだろう。
その近所で運営している他社のお客様をも誘導させる手を裏で黙々と打ち、
一人でも多くのユーザーを取り込んでいかなければ、残れないかも知れない。
仕事もゲームも、共通の部分が大いにあると言われて久しい。
雀鬼の戦術。
その奥は限りなく深く、恐ろしいものだと感じ、うすら寒い夏至の夜となった。